久々のマンガレビュー。いや正直結構溜まってはいたんですけどね。
そんな訳で今回は東京グランギニョル原作・古屋兎丸先生作(こういう表現でいいんですよね?)の「ライチ☆光クラブ」。
兎丸先生のファンとか過去に言いながら、持っているのは「Palepoli」と「ショートカッツ」「Garden」という、どちらも20世紀中の作品ばかり。21世紀に入ってからは気にはしていたが購入はしていなかったわけで。
その久々に(実に6~7年ぶり?)手を伸ばした兎丸作品が、伝説の劇団「東京グランギニョル」の作品を漫画化したコレになった訳です。
東京グランギニョルといえば、その名前しか聞いた事が無い不勉強な自分が最初に思いつく単語は、やはりというか何というか「丸尾末広」。
「Palepoli」の頃から絵や表現方法の巧さが際立っていた兎丸先生でしたが、久々に見たその絵は、(作品が作品なので当然かもしれないが)丸尾先生のソレにかなり似ていた。細いのに妙にしっかりとした線に、更にその上でひたすら細かい描き込み。「ショートカッツ」の少し太めでポップな描き方や、「Garden」に収められた狂気の奇作「エミちゃん」の紙面全体から感じられるバイオレントな空気を経て、「それでもまだこんな凄い描き方が出来るのか」と。それがまさにこのマンガの第一印象。
んで、実際じっくり読んでみると、最初こそ丸尾先生カラーが強く残ってるなぁなんて感じたものですが、後の方になってくると兎丸先生が完全に「ソレ」を飲み込み、新たな兎丸ヴァージョンとして完成された感すらありました。
あとがきを読めば解るのですが(最近、漫画のあとがきはよく読んでバックボーンとか知ろうとしていますが、自分で言うのもアレですがコレって読み方としてやらしくね?)、元々兎丸先生は東京グランギニョルに相当な影響(あとがきでは「影響じゃなくて価値観の基準」と書いてましたが)を受けてたそうで、つまりコレを描く事は「トラウマへの恩返し」、いや、むしろ自己の強烈な思い入れを良い方向にプラスして「トラウマの3倍返し」を果たした事にもなる訳ですよ。
しかも丸尾先生や飴屋法水氏ら当時の関係者と繋がり確認を取りながら。それってクリエイターとして最も幸せな事でもあるんじゃないかな。自らのルーツを自らの歴史に良い形でぶち込めた訳ですから。
ストーリーについては原作から相当アレンジを居れたようですが、元々の舞台を見た訳ではないので(公演は85年と86年。自分は当時小学生、知ってる訳が無い…)その差別化については語れませんが、結果としてその空気を「漫画」という形でしっかり閉じ込め、それでいて完成度も非常に高く仕上がった形になってるなぁ、とは思いましたね。
この「空気を閉じ込める」という作業が実は一番大切で、そのオリジンが放つ「熱量」をいかにそのまま持ち込めるかによって、こういった別ジャンルでのリミックス完成度が違ってくるんじゃないかなぁ、と改めて感じましたよ。ジャンルこそ違いますが、「アストロ球団」のドラマ版も、ストーリーはともかく「熱量」の激しさを感じて「すげー仕上がりだ!」と思ったものですし。
そういえばあとがきでも「舞台と漫画における情報量の差」みたいなものをちろっと書いてましたが、その情報量の差もかなり巧く使えてたんじゃないかと思う。でなければここまでの完成度まではたどり着けなかったはず。というか大げさな言い方をすれば、「漫画の可能性」はまだまだ広いぜ!って事を改めて教えられた気分。そう言ってもバチは当たらないと思いますよ、個人的に。
まあ元が東京グランギニョルで丸尾末広経由古屋兎丸行きという美しさとグロテスクの両極をいく作風だけに、万人へのオススメは出来ない…かもしれない。いや、そういう表現にゲロが出る程の嫌悪感を持たない限りは、むしろ普通に勧めてもいいのかもしれない。読んだ人のその後については保証しかねるが、それだけの力を持ってる作品といっても、過言じゃない。コレは断言できる。何故なら、オリジンが持つその力によって、その力をそのまま持ってきた最強レベルのリミックス作品なのだから。
- ライチ☆光クラブ
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- 発売元: 太田出版
- 価格: ¥ 1,344
- 発売日: 2006/06

4件 コ×ントが有るます
1 武 玲人 - 06/11/10(金) 04:05:35
ゲロさんのレビューだけ見てると猛烈に読んでみたいんですが、グロが死ぬほど苦手なんですよね、オレ……
2 gerorine - 06/11/10(金) 05:36:41
確かに内臓出まくり(むしろそこらへんにテーマの1つが隠されてる)なんでそれ系が苦手だと勧めにくいかも…
美少年同士の「カラミ」も有るしw
3 たまひこ - 06/11/13(月) 13:26:20
わー!凄い!さすがゲロリンさんのレビュー!
うまく作品を噛み砕き消化し文に起こせる文才や捉え方には尊敬の念を感じると共に自分の表現力や様々な能力の無さを痛感。
こんなレビュー書けないです。自分だったら幼稚園児の読書感想文レベルで終わってしまうよ。
やっぱりクリエイティブの渦中にいる人の中でも吸収しそれを自分の糧に出来る人は違うワァ。
ゼラが世界を手に入れるバージョンのストーリーだったらば、ゼラはどのような結末を迎えていたのでしょうね。
でもあの終わり方だからこそ完成度として高く収まったんでしょう。
グロでも単に吐き気をもよおすだけの不必要なグロではなくあの作品の持つグロさは「必然」でそれがうまく世界観を作り上げる材料であり、そのグロさをあまり気にさせない兎丸先生の力量に感服で胸いっぱいになりました。
4 gerorine - 06/11/19(日) 23:16:06
かなり遅レスですがそこまで絶賛されると正直恐縮至極ですよ!
>ゼラが世界を手に入れるバージョンのストーリーだったらば、ゼラはどのような結末を迎えていたのでしょうね。
そこで個人的に気になるのはジャイボとニコの存在かなぁ、なんて思ってみたり。カノンやライチ、タミヤはとりあえず置いといてw
まあこの2人がゼラにラヴな時点で(妾的愛人と盲信者って組み合わせですし!)ゼラの将来はやっぱ考えられないなぁ…
兎丸先生は上にも書いた通りギニョルの影響?がでかい分、影響って言葉は否定してたけど、グロやバイオレンスを材料として使う技量も「影響」として自然に入っていったのかなぁ、とも推測。でなきゃいくら力量が有ってもあそこまで巧く描けないんじゃないかな、とも思ったり。
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