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06/11/03(金) 10:07:35

カテ: 小説

君はフィクション

by gerorine

ramo1103.jpg2つ連続図書館で借りた本のレビュー。今度は中島らも先生の短編集ですよ。こちらも正直「うつうつひでお日記」を参考にしたんですが。

で、大まかな感想を先に言うと、色々と考えてしまう筒井御大の小説と比較すると、こちらは何か読んでいて幸せになれる感じ。作風の幅広さはともかく、アル中だの鬱だの大麻で逮捕など経験した挙句階段からすっ転んであの世に逝ってしまったこの方には、色々なアウトローに対する、色々な意味での「優しさ」を感じるんだよなぁ。或いは包容力とも言うべきなんだろうか。だからここまで支持されているのかもしれないんだけど。鬱持ちで無職、趣味もサブにも程がある的カルチャーな自分には持って来いな気がする。

らも先生の名前は中学の頃「宝島」で知った。中島らもの「らも」の字はラモーンズから取ったと聞いた記憶が。(合ってるのかなコレ)その当時からかなりロケンローな方だとは思っていたが、こうして一冊の本でらもさんに触れるのは初めてな訳でして。

ではこちらも短編ごとにちょこちょこと。作品数多いから短めに。

山紫館の怪
なかなかグッと来たホラーモノ。最後の数行のオチもあっさりテイストでステキ。ある意味ホラーの面白さを感じた。しかも最後の数行で

君はフィクション
表題作。コレもネタバレすると面白くないので(まあ、読んでる途中で解りはしますが)詳しくは書かないけどキュートなオトナの話。あコレヒントね。まあこれも立派な恋愛小説とでも言うべきなのだろうか。こういう恋愛も悪く無いどころか一番憧れる部類にすら入るんじゃねえの!?面白い。

コルトナの亡霊
これもホラー。真実がうやむやなうちにまた強烈なオチが。真実なんてのは本当はどうでもいいけど、人は何か興味を持つと、リスクすら考えずに突っ走れるんだよね。そんな上がったテンションに「はいソレマデヨ」と持ってきたオチに妙なリアル感が。

DECO-CHIN
コレ「うつうつ」で吾妻先生が「大傑作」と言ってたけど、まさにその通り。ロケンローな部分に昔(今もか)ライブハウスにちょこちょこ出入りしてた頃を思い出し、主人公の突っ走り方にある種の共感を覚えた…って、陳腐な表現だけど、やっぱコレこそ「青春」なんだよなぁ。爽やかにフリークスとか出てきて堀骨ちっくであるにも関わらず、最終的には無茶苦茶なオチだけど青春を捧げた、ある種よしもとよしとも的でもあるストーリー。自分の「すべき事」が見つからない今読むにはあまりにも丁度良すぎた。俺には道がまだ見えないけど、らも先生にも、そしてこの主人公にも、道が見えたらしい。その道は触れずとも射精出来るくらいステキな道の筈。しかしその為に捨てるモノも有る。さあ、俺は何を捨てたらいい

水妖はん
未発表作品。これもホラーっちゃホラーか。土着的な感じでもある。土着的な人間と「もののけ」のバトル。そのオチに終りは無いと感じた。どこでもこんな終りの無い戦いってのは有るのかな。げに恐ろしきは恨みの連鎖よ

東住吉のぶっこわし屋
ええと…ひたすらバイオレント。しかも無邪気で明るいバイオレント。何だろうこの妙な楽しさは。恐らくコレはどっちを主眼にして読むかで読み方が違ってきそうだが、絶対に主人公を主眼にするよりも、「ぶっこわし屋」に主眼を入れた方が何だか気持ちがいい。デストロイ!陽気にデストロイ

結婚しようよ
恐らく自伝的でもある70年代話。はっぴぃえんどや三上寛、吉田拓郎などそんなライブを交えながら、自由とか色々考えてる話。コレはこの時代を生きた人間でないと解らないだろうしなあ。(ちなみにらも先生の生まれた年は自分の両親と一緒だった)はっぴぃえんどと三上寛のステージの衝撃が伝わってるのがまた何とも。やっぱり俺って生まれてくるのが10年遅かった?そう思ってる人間は結構居そうだけど。

ねたのよい
山口冨士夫に捧げた一作。村八分トリビュートでも間違ってない。さっきの「結婚しようよ」にしてもそうだけど、らも先生は昔見たライブの衝撃をそのまま伝えたがってるのがステキだ。そんな今書きながらBGMで流してるのが「村八分ライブ」だったりする訳ですが。やっぱりこの人たちは「ホンモノ」だったんだろうなぁ。その思わざるを得ない。そんなホンモノの凄さを知るにはこの1作だけでも結構充分なんじゃなかろうか。

狂言「地籍神」
未発表作品でまんま狂言の台本。何だか漫才気分の狂言。文学っつーよりももはや一種のネタ。でもコレって書いてる事は漫才でも、やっぱり狂言なんだよね、何となく、ですが。

バッド・チューニング
まあタイトルが全てを表してるという事で。鬱の経験者は「一生懸命でない事」を推奨してくるし、それで何とかやっていけるしやってきたと言う。かくいう俺もそう。つまりはそういうらも先生のちょっとした優しさ。それが即ちアウトロー…とは言いたくはないけど、何が正しいとか正しくないとか、んな事ぁどーでもいいんだよ!というらも先生の笑い声が聞こえてきそうだ。てかコレを最後に持ってきた構成もステキだ。それはそれで正しい、なんつってな

…何だか結局長くなってないか?まあいいけど。

あとがきは実娘の中島さなえ。父親との思い出を書いていた。でもブルマはやるべきだったよ!個人的に。

とにかく、何だか色々な意味で救われたような気がする一冊でしたよ。丁度タイミングが良かったんだろうね。市の相談や自助グループで弾みつけて、登録制バイトにも乗り込んで、ちょいペディアでも弾みがついて…そんな中のこの本。
まあ、それだけじゃなくて、「何か残したい、皆を驚かせる何かを」っていう訳のわからない創作意欲みたいなものも、俺がとにかくしがみついてでも生きてる理由なのかなー、と。その潤滑油がこの本になっている事は…もう上でも書いた気もするが、まあいいや。

ルーズでもいいじゃない、ただ、お前の心に残ってやりますよ!
既に自分も何度も言ってる事だけど、そういう事じゃないかな。

君はフィクション
君はフィクション
  • 発売元: 集英社
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2006/07

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